投資用不動産の相続は揉める?

「いくらなのか」が一つに決まらない資産の難しさ

アパートや賃貸マンション、将来の値上がりを見込んだ土地などの「投資用不動産」は、相続の場面でトラブルになりやすい資産です。

「不動産なのだから、調べれば価値は分かるのでは」と思われがちですが、実はそこに大きな落とし穴があります。相続で揉める背景には、「評価の考え方が複数存在する」という構造的な問題があるのです。

目次

なぜ「いくらか」で意見が割れるのか

相続が始まると、まず必要になるのが財産の評価です。しかし、不動産には一つの“正解価格”があるわけではありません。

相続税の計算では、土地は主に路線価方式または倍率方式により評価され、建物は固定資産税評価額を基準に算出されます。これらはあくまで税負担の公平性を確保するための「公的評価」であり、市場価格とは一致しないのが通常です。

一方で、遺産分割においては、実際に売却した場合の価格、すなわち「時価(実勢価格)」を基準に考えることもあれば、公的評価を参考にすることもあります。どの評価基準を採用するかは法律上の統一ルールがなく、相続人間の合意に委ねられます。

このため、「相続税評価額」と「遺産分割のための評価額」が乖離することは珍しくなく、ここで認識のズレが生じやすくなります。

投資用不動産は「収益」で価値が変わる?

さらに話を複雑にするのが、投資用不動産特有の「収益」という視点です。
投資家は物件を評価する際、「どれだけ家賃収入を生むか」を重視します。いわゆる収益還元法という考え方で、将来得られる収益をもとに価値を算出します。

家賃が安定していれば評価は高くなり、空室が多い、修繕費がかかるといった要素があれば評価は下がります。

この収益ベースの評価は、路線価などの公的評価と大きく異なることがあります。
たとえば、ある相続人は「路線価ベースで2,000万円程度」と考え、別の相続人は「収益を考えれば3,500万円の価値がある」と主張する、といったことが実際に起こります。

同じ不動産を見ているのに、前提が違うため議論がかみ合わないのです。不動産鑑定士に依頼して評価を出す方法もありますが、費用がかかるうえ、その結果に全員が納得するとは限りません。

マンションは評価ルールも変わっている

投資用マンションについては、評価のルール自体も変化しています。
2024年1月以降、区分所有建物(いわゆる分譲マンション)の相続税評価では、従来の評価額に対して「区分所有補正率」を乗じる仕組みが導入されました。

これは、従来の評価方法では市場価格(時価)との乖離が大きく、特に高層階ほど評価額が過度に低くなる傾向があったことを是正するためのものです。

これまで、実際の取引価格が相続税評価額の2倍以上になるケースもありましたが、この改正により、特に高層階のマンションでは評価額が引き上げられる傾向があります。

したがって、過去の知識や簡易な試算のままでは、実態とかけ離れた評価となる可能性があるため、最新ルールに基づく確認が不可欠です。

「欲しい人」と「いらない人」で分かれる資産

投資用不動産は、相続人の意向が分かれやすい点でもトラブルの原因になります。
家賃収入というメリットを重視する人がいる一方で、管理負担や空室リスク、修繕費、税負担といったデメリットを懸念する人もいます。

分け方としては、売却して現金で分ける方法や、一人が取得して他の相続人に代償金を支払う方法などが現実的です。

一方で、共有名義にする方法は一見公平に見えますが、将来的な売却や管理の場面で全員の同意が必要になるため、かえってトラブルを長引かせる要因になりがちです。

まとめ:評価の「前提」をそろえることがトラブル回避に

ここまで見てきたように、投資用不動産は「価値が一つに決まらない」「収益という独自の評価軸がある」「相続人の利害が一致しにくいこと」という複数の要因が重なり、相続トラブルが生じやすい資産です。

だからこそ重要なのは、「いくらか」そのものよりも、どの評価基準を前提にするかを早い段階で共有することです。

遺言書で承継方法を明確にしておくことに加え、生前の段階で鑑定評価や簡易査定を活用し、評価の目線をそろえておくことで、相続人間の対立を大きく抑えることができます。

司法書士事務所を母体とする不動産会社・中野リーガルホームでは、相続手続きと不動産評価の両面から全体像を整理し、実務に即した解決策をご提案しています。判断に迷う段階でも、早めに状況を把握しておくことが、将来の安心につながります。初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。

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