実家が空き家になったとき、放置してよいのか、売却すべきなのか、管理を続けるべきなのか―多くの方が悩まれるポイントはここにあります。
両親が亡くなり相続した実家を「遠方で住めない」「思い出があり手放せない」「老後に戻りたいので売却はしたくない」といった理由で空き家のままにしてしまうケースは少なくありません。
しかし、空き家を放置すると固定資産税の負担や老朽化による倒壊リスク、特定空き家に指定される可能性など、思わぬ問題が発生します。
ここでは
- 空き家を放置した場合のリスク
- 管理や維持の方法
- 売却や活用の選択肢
- 続や処分に必要となる手続き
についてわかりやすく解説し、最適な判断ができるよう整理しています。
不動産相続の手続きについては、こちらのページをご覧ください。
相続する不動産の売却
目次
空き家になった実家を放置してしまうと
実家が空き家になったとき、「とりあえずそのままにしておこう」と考えてしまう方は少なくありません。しかし、空き家を放置すると次のようなリスクが生じます。
- 固定資産税や火災保険、維持費を払い続ける必要がある
- 建物が老朽化し、倒壊の危険が高まる
- 庭木や草が伸び放題になり、景観を損なう
- 放火や不法投棄など、犯罪に利用される恐れがある

特に老朽化や犯罪利用は近隣住民に迷惑をかけるだけでなく、損害賠償責任を負う可能性もあります。例えば、台風で空き家の屋根が飛ばされて隣家を壊してしまった場合、所有者が修繕費を負担しなければならないことがあります。
こうした問題を防ぐために「空き家等対策特別措置法」という法律があります。
「倒壊などの著しく保安上危険となる恐れがある状態」「著しく衛生上有害となる恐れがある状態」「著しく景観を損なっている状態」「放置することが不適切である状態」といった状態の空き家を「特定空家」として指定し、行政が指導や改善命令を行います。特定空家に指定されると、固定資産税の軽減措置が外れたり、罰金や行政代執行(強制的な取り壊し)につながることもあります。
総務省の「住宅・土地統計調査」(令和5年・2023年10月1日時点)によると、全国の空き家数は約900万戸に達し、空き家率は13.8%となっています。これは過去の調査から増加傾向が続いていることを示しています。
特に問題となっているのは、「賃貸用・売却用・別荘などの二次的住宅」を除いた空き家です。この分類にあたる空き家は385万戸にのぼり、2018年の349万戸から37万戸も増加しています。つまり、活用目的がなく放置されている空き家が急増しているのです。こうした空き家は管理が行き届かず、老朽化や防犯上のリスクを抱えやすいため、社会問題として深刻化しています。
空き家を放置すると税金や管理費の負担だけでなく、近隣への迷惑や法律上のペナルティにつながります。したがって「維持する」か「売却する」かを早めに判断することが重要です。
空き家となった実家を維持する場合
当面は住めないけれど、いずれは実家に戻って暮らしたい、あるいは思い入れが深くどうしても売却したくないという方もいらっしゃいます。そのような場合には、なるべく良い状態で実家を維持する方法を考えることが大切です。
管理をして維持する

家を維持するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。室内の清掃、カビ対策のための換気、雨漏りの点検と修繕、庭木や草の手入れ、郵便物の処理などが必要です。地域によっては台風や雪への備えも重要です。
物件の状況にもよりますが、少なくとも2か月に1度は足を運ぶことをおすすめします。遠方に住んでいる場合は交通費や時間の負担が大きいため、専門の管理業者に依頼した方が結果的に安く済むこともあります。
また、維持にはメンテナンス費用以外にも固定資産税、火災保険、電気や水道の基本料金、都市計画税などの支払いが続きます。資金の余裕があり、建物の状態が良好であれば維持は現実的な選択肢となります。
人に貸して維持する
実家を賃貸物件として貸し出す方法もあります。人が住むことで日常的なメンテナンスの手間が減り、家賃収入があれば固定資産税などの負担を軽減できます。
ただし、貸し出す前にリフォームを行う場合、費用をかけすぎると家賃収入で回収できないことがあります。さらに、貸主には修繕義務があるため、設備の故障や修繕費用も見込んでおく必要があります。収支のシミュレーションを事前に行い、リスクを理解した上で判断することが重要です。
また、賃貸に出すと「まとまった資金が必要になったときにすぐ売却できない」という制約もあります。人に貸す方法はメリットもありますが、リスクを十分に考慮して選択する必要があります。
空き家となった実家を売却する
自分が生まれ育った思い出の多い実家を売却するのは、寂しくつらいことです。なかなか決断できない方も多いでしょう。しかし、将来実家に戻って暮らす予定がない、維持していく資金的な余裕がないという場合には、売却を選ぶことが現実的な解決策になることがあります。
売却のメリット
- 固定資産税や火災保険、維持費などの支出がなくなる
- 売却代金を老後の生活資金やローン返済に充てられる
- 相続人が複数いる場合、公平に遺産を分割できる
不動産をそのまま共有すると「誰が住むか」「修繕費を誰が負担するか」で揉めることが多く、次の世代に相続されるとさらに共有者が増えて問題が複雑化します。売却して現金化しておくことで、相続人同士の話し合いがスムーズになりやすいのです。
事例(兄弟姉妹間のトラブル)
例えば、兄弟姉妹3人で実家を相続した場合、誰も住まないまま固定資産税を分担して払い続けるケースがあります。数年後に建物が老朽化し、修繕費をめぐって意見が対立し、結局裁判にまで発展した例もあります。こうしたトラブルを避けるために、早めに売却して現金で分ける方が安心できる場合があります。
空き家を売却することは、寂しさや葛藤を伴う一方で、税金や維持費の負担をなくし、相続トラブルを防ぐ大きなメリットがあります。いずれ住む予定がないのであれば、自分の代で整理しておくことが子ども世代への負担を減らすことにつながります。
相続した不動産の名義変更(相続登記)について
実家を売却しようと思ったら、まず不動産会社へ相談に行こうと考える方も多いでしょう。しかし、相続した不動産を売却するためには必ず必要な手続きがあります。それが 相続登記です。
相続登記とは、親から相続した不動産(土地・家・マンションなど)の名義を、相続人である子どもや配偶者に変更することをいいます。名義変更をしないと、誰が正式な所有者なのか分からないため、不動産会社も売却の手続きを進めることができません。
これは売却だけでなく、賃貸契約を結ぶ場合でも同じです。実家を人に貸すことを考えている場合でも、まずは相続登記を済ませておく必要があります。名義変更をして初めて「正式な所有者」として取引が可能になるのです。

相続登記をしないと起こるデメリット
不動産を相続したあと、名義変更(相続登記)をしないまま放置してしまうと、思わぬトラブルにつながります。
- 手続きが複雑になる
時間が経つと、相続人の誰かが亡くなったり、認知症になったりすることがあります。すると次の世代に相続が移り、共有者が増えてしまいます。意思確認が難しくなり、後見人の選任など余分な手続きが必要になるため、相続登記をしないままでは問題がどんどん複雑化します。 - 遺産分割協議がまとまらないリスク
相続人同士で話し合いがまとまらず、遺産分割協議が進まないケースもあります。印鑑代(ハンコ代)をめぐってトラブルになることもあり、家族間の関係が悪化する原因になりかねません。 - 売却や契約ができない
例えば、兄弟姉妹3人で実家を相続した場合、名義変更をしないまま売却を進めようとすると「誰が売主なのか」「誰が契約に署名するのか」が不明確になります。その結果、買い手が見つかっても契約が成立せず、売却のチャンスを逃してしまうことがあります。
一人で相続した場合でも、登記をしないまま次の世代に引き継がれると、二世代分の手続きが必要になり、子どもに大きな負担をかけてしまいます。
令和6年(2024年)4月から相続登記は法律で義務化されました。相続から3年以内に登記をしない場合、過料(罰金)が科される可能性があります。さらに、この義務化は過去の相続にも適用されるため、「売却する予定がないから登記は後回しでよい」と考えてしまうと、思わぬ不利益につながることがあります。
相続登記をしないと、手続きが複雑化し、売却や契約ができず、次の世代に大きな負担を残すことになります。さらに法律で義務化されているため、登記をしないままでは罰則の対象になる可能性もあります。相続した不動産の名義変更がまだ済んでいない場合は、早めに手続きを進めることが安心につながります。
実家の相続登記から売却まで、ワンストップでおまかせください
中野リーガルホームは、登記手続きや権利関係の調査等の可能な司法書士の資格と、不動産仲介業(宅建業)の資格の両方を持つ事務所です。
不動産登記などの相続の手続きと、不動産売却を同時にご依頼いただけますので、時間の無駄なく一貫したサポートでご相談者様のお力になることができます。
実家が遠方にあるときでも、土地(宅地・畑・田んぼ)、家屋の名義変更の手続きまで、当司法書士事務所で代行できます。
また、相続した実家が、借地や底地、路地状敷地(旗竿地)などの場合でもご相談ください。
中野リーガルホームなら、法的な問題を解決しながら実家の売却をサポートすることが可能です。
実家の売却事例
実家の処分に関わる問題は他にも、家財や遺品の整理・処分、先祖の墓をどうするかなど、様々なハードルがあります。場合によっては時間を費やす大仕事となることもあるでしょう。
中野リーガルホームでは、司法書士と不動産仲介業の2つの立場から、様々な問題解決のお手伝いをすることが出来ます。初回のご相談は無料で承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。




