実家が空き家になる前に考える「家族信託」という選択

家族信託で空き家対策をおこなうメリットは?空き家増加の原因もご紹介

近年、日本では空き家が急速に増えており、大きな社会問題となっています。人が住まない家は傷みが早く、放置すると近隣への迷惑や資産価値の低下につながります。さらに、親から子どもへ正式に相続登記をしていない家は、子どもがすぐに売ったり貸したりすることができません。

「実家に誰も住む予定がないけれど、親が元気なうちは何もできない」「将来、親が認知症になったらどうしよう」──こうした不安を抱えている方は少なくありません。そこで注目されているのが「家族信託」という制度です。これは、親が健在のうちに子どもへ管理や売却の権限を託すことで、空き家になる前から予防策として活用できる仕組みです。

実家が空き家になってしまう前に準備しておくことで、将来のトラブルを防ぎ、安心して家を守ることができます。今回は、空き家が増えている原因と、家族信託を利用した空き家対策のメリットと注意点について、わかりやすくご紹介します。

目次

空き家が増加している原因とは?「住まない家」が処分できない理由

日本で空き家が増えている大きな理由は、少子高齢化です。今では、親世帯と子世帯が別々に暮らしていて、一緒に住む予定がないケースが多くなっています。そのため、親が亡くなったあとに子どもが家を相続しても、誰も住まずに放置されてしまうことがあります。

また、家を貸し出しても借り手がいなくなると空き家に戻り、そのまま管理されないまま残ってしまうケースもあります。遠方に住んでいる子どもにとっては、定期的に実家を訪れて管理するのは大きな負担です。交通費や時間がかかるだけでなく、草刈りや換気、設備の点検といった作業は体力的にも大変です。

さらに深刻なのは、親が認知症になってしまった場合です。登記簿上は親の名義のままになるため、相続登記をしていない限り、子どもは親が亡くなるまで家を売ったり処分したりすることができません。たとえ子どもが「今のうちに売却したい」と思っても、親に判断能力がなければ売買契約を結ぶことができず、手も足も出ない状態になってしまうのです。

このように、住む予定がなくても処分できない家が増えていることが、空き家問題の大きな原因となっています。結果として、管理が行き届かない空き家が全国で増え続けているのです。空き家は持っているだけで固定資産税がかかり、管理責任も残り続けます。「いずれ何とかしよう」と思っているうちに時間が過ぎ、気づいたときには手遅れになっているケースも珍しくありません。

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空き家問題の解決に有効な家族信託とは

家族信託とは、親を「委託者」、子どもを「受託者」として契約を結び、登記名義を変えずに家の管理を子どもに任せることができる制度です。契約をしておけば、親が認知症などで判断力が低下しても、受託者となった子どもが家を売却したり賃貸に出したりすることが可能になります。そのため、空き家を放置せずに済み、資産を有効に活用できるのです。

家族信託の仕組みを簡単に説明すると、親が「この家の管理をあなたに任せます」と子どもに託し、子どもは「管理人」として家を守り、必要に応じて売却や賃貸といった判断を行えるようになります。所有権そのものは親に残ったままですが、管理や処分の権限は子どもに移るため、親が判断できなくなっても家の活用が止まらないのが大きな特徴です。

さらに、親を委託者だけでなく「受益者」にも設定すれば、家を売却したり賃貸に出したりした収益を親が利益として受け取ることができます。これにより、親の生活費や施設入所費用をまかなうことができ、親が亡くなった後に子ども以外の相続人ともめるリスクも減らせます。たとえば、家を売却した代金を親の介護費用に充てることで、他の相続人から「勝手に売った」と言われるトラブルを防げるのです。

ただし、家族信託契約は親と子どもの双方に十分な判断能力があるうちにしか結ぶことができません。親が認知症と診断されてしまうと契約はできなくなるため、早めの準備が大切です。「まだ元気だから大丈夫」と油断していると、ある日突然、認知症の診断を受けて手遅れになることもあります。家族信託は「転ばぬ先の杖」として、親が元気なうちに準備しておくことが何よりも重要なのです。

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家族信託で空き家対策をおこなうメリット・デメリット

家族信託とは、親が元気なうちに、自分の不動産などの財産について「誰に管理や処分を任せるか」「将来どのように引き継がせるか」を契約で決めておく仕組みです。相続とは異なるルールで財産を管理できるため、空き家対策として注目されています。

たとえば、親を委託者、子どもを受託者、親自身を受益者とする形(自益信託)で家族信託を組むと、子どもに家の管理や売却の権限を渡しつつ、家から生じる利益は親が受け取る仕組みになります。このような設計であれば、一般的には贈与とは扱われず、贈与税が課税されないケースが多いです。

通常、親が生前に子どもへ不動産の名義を移すと、贈与とみなされ、高額な贈与税が発生する可能性があります。一方、家族信託では、不動産の名義は「信託による所有権移転」として受託者に移りますが、信託契約の目的に従って管理されるため、受託者が自由に使える財産にはなりません。利益を受け取るのは受益者である親のまま、という点が大きな特徴です。

また、信託による所有権移転の登録免許税は、一般的な贈与による移転よりも低く設定されており、多くのケースで費用を抑えられる点も実務上評価されています。

家族信託では、契約内容によって、子ども(受託者)が家の管理、修繕、売却、賃貸などを行うことをあらかじめ決められます。そのため、親の判断力が低下した後でも、リフォームや売却、賃貸化、解体といった判断を止めることなく進められ、空き家を長期間放置するリスクを減らせます

成年後見制度との違いも重要なポイントです。成年後見制度では、家庭裁判所が選任した後見人が本人の財産を管理しますが、自宅の売却など重要な処分には、原則として家庭裁判所の許可が必要になります。後見人は「本人の財産を守る」ことを最優先に行動するため、空き家の売却や積極的な活用が難しくなる場合も少なくありません。

これに対して、家族信託は、本人に判断能力があるうちに、その意思を契約に反映させることができます。その結果、将来を見据えた柔軟な意思決定が可能となり、空き家対策と非常に相性の良い制度といえます。

さらに、家族信託では、「親が亡くなったら信託を終了し、その後は特定の人が財産を受け継ぐ」といった設計も可能です。これにより、誰が財産を引き継ぐのかを事前に明確にでき、相続人同士のトラブルを防ぎやすくなります。生前から死後までの流れを、一つの仕組みで整理できる点は、家族信託ならではの強みです。

一方で、家族信託には注意すべき点もあります。

まず、家族信託は比較的新しい制度であるという点です。信託法自体は古くからありますが、現在の形で家族信託が広く利用されるようになったのは、2007年の信託法改正以降であり、まだ一般には十分に浸透しているとはいえません。そのため、制度を正しく理解し、実務経験のある専門家は限られています。相談先を慎重に選ぶことが重要です。

また、契約内容の設計が非常に重要です。内容を誤ると、管理や売却ができなくなったり、想定外の税負担が生じたりするおそれがあります。信託登記や契約設計には専門的な知識が必要なため、インターネット上の雛形をそのまま使うのは危険です。

さらに、家族信託は、親と子どもの双方に十分な判断能力があるうちにしか契約できません。親が認知症と診断された後では利用できなくなるため、早めの準備が必要です。

家族信託は、親の判断力が低下した後も、子どもが家を適切に管理できるようにするための「事前の予防策」として非常に有効です。税負担や手続きのリスクを抑えながら空き家問題に備える手段として、司法書士や弁護士などの専門家に相談しながら進めることが、安全で確実な方法といえるでしょう。

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まとめ:早めの準備が、将来の安心につながる

空き家を持っているだけでも、固定資産税や管理費などの費用がかかり、維持は大変です。かといって、早急に子どもへ相続させると贈与税が発生して負担が大きくなることもあります。「何もしない」という選択が、実は最も負担の大きい選択になることもあるのです。

家族信託を活用すれば、親が認知症になっても管理が止まらないため、空き家を放置せずに済み、将来のトラブルを予防することができます。

ただ、家族信託は「親が元気なうちに準備する」ことが何よりも大切です。認知症の診断を受けてからでは遅く、その時点では他の選択肢も限られてしまいます。今、親が元気なうちに、家族で話し合い、専門家に相談することが、将来の安心につながります。

司法書士事務所に相談することで、制度の複雑さを気にせず、安心して家族信託を活用できます。契約書の作成から登記手続き、その後のサポートまで、ワンストップで対応できる専門家を選ぶことで、スムーズに準備を進められます。

中野区を中心とした東京23区の不動産売却なら、中野リーガルホームへ。司法書士のライセンスを取得しているスタッフが、法律と不動産の両面から丁寧にサポートいたします。家族信託のご相談から、将来的な不動産売却まで、損のない選択をご提案させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

「まだ早い」と思っているうちに、準備のタイミングを逃してしまうことがあります。今こそ、将来の安心のために、一歩を踏み出してみませんか。無料の相談も受け付けていますので、まずはお気軽にご連絡ください。

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初回投稿日: 2023年8月29日
最終更新日:2025年12月22日

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