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親から事故物件を相続しなければならない方が、売り払いや維持管理、税金などの取扱いに困って相談に来たことがあります。
「こんな物件は誰も買わないのではないか」「売れなかったらどうしよう」と、不安から何をすればよいかわからず立ち止まってしまう気持ちは、多くの方が感じるものです。
事故物件は「心理的瑕疵(しんりてきかし)」があるため、一般の買主に敬遠されやすく、売却活動が難航しがちです。さらに、固定資産税や維持費は通常どおり発生するため、放置すればするほど負担が増えてしまいます。
この記事では、事故物件の定義や固定資産税の扱い、売却時の注意点などを、初めての方にもわかりやすく解説します。「もし相続したらどうすればよいのか」を知っておくことで、いざというときにも落ち着いて対応できます。事故物件は確かに売れにくい面がありますが、正しい知識と適切な対策があれば、売却は十分に可能です。
目次
事故物件とは、建物内で自殺や他殺、事故死などが発生し、買主に心理的な抵抗を与える可能性がある物件を指します。こうした事実は「心理的瑕疵」と呼ばれ、不動産会社や売主には、原則として買主へ説明する告知義務があります。
売れにくい理由としてまず挙げられるのが、事故のイメージが残り、購入をためらう人が多い点です。たとえ室内がきれいにリフォームされていても、「過去に何かあった場所」という印象が心理的な壁になることがあります。日本では特に、このような点を気にする傾向が強いといわれています。
次に、告知義務があるため、事実を隠して売却できない点も大きな要因です。万一、事故の事実を告げずに売却し、後から判明した場合には、契約不適合責任を問われ、損害賠償請求や契約解除につながるおそれがあります。正直に説明しなければならないからこそ、買主が限られてしまうのです。
さらに、価格面でも影響があります。一般的に事故物件は、相場よりも2割から5割程度安くなることが多く、事故の内容や経過年数によっては、さらに値下げが必要になる場合もあります。
もっとも、事故の内容や時間の経過によっては、買主の抵抗が小さくなるケースもあります。自然死や病死の場合は心理的な影響が比較的少なく、発生から年数が経過していれば記憶も薄れていきます。また、投資目的の買主や事故物件を専門に扱う買取業者であれば、一般の個人より柔軟に検討してもらえることがあります。
国土交通省のガイドラインでは、自然死や老衰死については、原則として告知義務の対象外とされています。高齢化が進む中で、自宅で亡くなること自体は珍しいことではなく、すべてを事故物件として扱うと、不動産取引に大きな支障が出るためです。病気による死亡についても、通常の生活の中で起こり得るものとして、原則は告知不要とされています。
一方、自殺や他殺など事件性のある死亡については、一定期間が経過すると告知義務が不要になる場合があります。ただし、賃貸物件ではおおむね3年程度という目安が示されているものの、売買については明確な期間は定められていません。そのため、事故の内容や周囲への影響、近隣住民の認知度などを踏まえて、個別に判断されるでしょう。
たとえば、大きく報道され地域で広く知られている事件の場合、長期間が経過しても告知義務が残ると判断されることがあります。一方、周囲にほとんど知られていない小規模な事故であれば、一定期間の経過により告知不要とされる可能性もあります。
このように、告知義務の判断は非常に繊細です。自己判断で進めると、後からトラブルになるおそれがあるため、不動産会社や司法書士などの専門家に相談しながら慎重に判断することが重要です。
事故物件であっても、税金の扱いは原則として一般の物件と変わりません。固定資産税は毎年課税され、事故があったことを理由に免除や軽減がされることはありません。税率は原則1.4パーセントで、固定資産税評価額にこの税率を掛けて計算されます。つまり、事故があったからといって税負担が軽くなるわけではないのです。
ただし、土地については「住宅用地の特例」により、課税標準額が軽減されます。建物が建っている土地であれば、200平方メートル以下の部分は6分の1、200平方メートルを超える部分は3分の1に軽減されます。しかし、建物を取り壊して更地にすると、この特例は適用されなくなり、固定資産税が大幅に増える点には注意が必要です。
相続税についても、事故物件だからといって特別な扱いはありません。通常の不動産と同様に評価され、一定額を超えれば相続税が課税されます。
さらに、維持管理の負担も無視できません。清掃や換気、設備の点検、草刈り、修繕といった管理は、すべて相続人の責任になります。管理を怠ると建物の劣化が進み、状態によっては「特定空家」に指定され、住宅用地の特例が外れる可能性もあります。その結果、税負担がさらに重くなることもあります。
こうした事情から、相続放棄を検討すべきケースもあります。他に相続財産がほとんどなく、物件の価値が低い場合や、維持費の負担が大きい場合には、現実的な選択肢となることがあります。ただし、相続放棄後も管理責任が残るケースがあるため、判断する前に専門家へ相談することが重要です。
固定資産税は、一定の条件を満たすと課税されない場合があります。土地は課税標準額が30万円未満、建物は20万円未満の場合、固定資産税が課税されません。ただし、土地については同一市区町村内の合算で判断されるため、複数の土地を所有している場合は注意が必要です。
住宅用地の特例については前述のとおり、事故物件であっても適用されます。そのため、売却前に建物を残しておく方が、税負担を抑えられるケースは少なくありません。
また、一定の要件を満たすリフォームを行った場合、翌年度の固定資産税が減額される制度があります。事故物件をリフォームして売却する場合、所有期間中の税負担を軽減できる可能性があります。
農地転用による税負担軽減という方法もありますが、実際には農業委員会の許可が必要で、都市部では認められにくいため、現実的な選択肢とはいえない場合がほとんどです。
事故物件を売却する際は、事故の内容を正確に説明し、告知義務をきちんと果たすことが大前提です。事実を隠すと、後のトラブルにつながるおそれがあるため、誠実な対応が重要です。
また、相場より低めの価格設定が必要になることが多いですが、必要以上に安くする必要はありません。物件の状態や立地を踏まえ、適正な価格を見極めることが大切です。
事故物件を専門に扱う買取業者へ依頼する方法もあります。価格は低くなりやすいものの、確実かつスムーズに売却できる点は大きなメリットです。さらに、リフォームや清掃によって印象を改善することで、買主の心理的な抵抗を和らげる効果も期待できます。
事故物件は、通常の物件と同じように税金や維持費がかかるため、不要であれば早めに売却や相続放棄を検討することが、負担軽減につながります。放置すればするほど、費用とリスクは増えていきます。
やむを得ず引き継ぐ場合でも、告知義務を守り、適切な価格設定や売却方法を選べば、売却は十分に可能です。事故物件だからといって、あきらめる必要はありません。
事故物件の相続や売却でお困りの際は、司法書士事務所が母体の「中野リーガルホーム」にご相談ください。法律と不動産の両面から、状況に応じた解決策をご提案いたします。無料相談や査定にも対応しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
初回投稿日: 2023年8月29日
最終更新日:2025年12月23日